ceejtpi6.JPGそのパレードは14:30からだった。

湿度が高く無風、Tシャツ姿でも汗が滴り落ちるような、昼下がりだった。


*



白熊とラッコの着ぐるみが、そのパレードを先導した。

その着ぐるみは「着る」というより「中に入る」という表現の方が適確な程の、大きな着ぐるみだった。

背格好もさることながら、歩く仕種、手を振る仕種から、僕はこの二人が女性だと確信した。

長年の勘だ。


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息苦しくなるほど湿度の高い空気の中、彼女らは集まった観衆の前で必死に手を振る。

きっとあの毛皮の密室の中は、彼女らの濃密な匂いと湿度で充満し、想像を絶する状況なのだろう。

さながら個室サウナの様に。


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やがてパレードの終点に到着し、彼女らは、倉庫の前で客たちにお別れの挨拶をした。

倉庫の袖で、係員に肩を叩かれ、「おつかれさん」と彼女らをねぎらうさまを、見た。

彼女らは「お疲れ様でした」と言わんばかりに、お互い深々と、そしてゆっくりと頭を下げた。

その姿は、外見こそシロクマとラッコだが、素振りは既に、一ステージを終えた操演者の彼女達そのものだった。

そしてそんな彼女らねぎらうかの様に、係員はおもむろに背中のジッパーをはずし、中から彼女らを救出しようとした。

きっと中から、これ以上とない汗をかいた、小柄な女性が出てくるはずだ。

僕は胸の鼓動が高鳴るのを隠せなかった。


しかし、背中のジッパーが開く前に、彼らは倉庫の中に入っていってしまった・・・


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僕は僕らを必死になって楽しませてくれた、彼女らの姿を見たかっただけだ。

でも、また望みは叶わなかった・・・

この胸の奥に何かがつかえたような、もどかしさは一体何々だろう。

いうなれば、まるで結末のないドラマを見ている様なものだ。

こうなるということは、ある程度はわかっていたはず・・・

また切ない気持ちになるって、解っていながら、見届けてしまうなんて、僕も馬鹿な男だ。


でも、僕はまた、見届けてしまうだろう。

どんなに胸が張り裂けそうな、思いをしても・・・


【注:この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは一切関係ありません。また写真も一切関係ありません】